流西遊影日記

おはようございます。「流西遊影展」、いよいよ今日10月6日が最終日です。今日は午後5時で終了となりますので、お気をつけ下さいね。僕は12時から5時までずっと在廊予定です(終了後に撤収作業が有ります。もしお時間がある方、手伝ってくれると嬉しいです〜)。

今回の個展のテーマに《平家物語》を据えたのは、今年の8月上旬に琵琶演奏で「壇ノ浦」の件(くだり)を聞いた事がきっかけでした。初めて聞いた生の琵琶語りに、いろんなイメージがわーっと頭の中に流れ込んできて、その絵を描きたいと思ったのです。いつも一緒に個展を作っている相棒のマルヤマさんにその体験を話したところ、彼が今まで一番感動したお芝居がやはり壇ノ浦の合戦に材を取った《子午線の祀り》という舞台だったと聞き、にわかに盛り上がりました。まずは現地を見て来いと背中を押されて旅に出たという経緯が有ります。

そもそも琵琶を聞いたのは、演奏者が僕の妹の友人だったからです。和楽器には興味があったものの、琵琶を聞くのはその時が初めてで、こういう展開になる事を期待していたわけではありません。不思議な縁のようなもの。その琵琶奏者、榎本桃香さんが昨日会場に来てくださいました。彼女のレパートリーは多岐に渡りますが“平家物語はとても重要な演目なので、それを聞いてこういうテーマに広がったのはとても嬉しいです”と言ってくれました。まだ若い方で、これからどんどん活躍の場を広げて行くと思います。どこかでお名前を聞く機会があったら是非チェックしてみてください。

琵琶は弦楽器ですが、バチが胴に当たる程激しく打ち鳴らされる様は時に打楽器のようです。語りがメインなので、琵琶の音は奏者の声を彩る効果音のような役割を果たします。講談や落語のような、日本の伝統的な話芸の一形態という個人的な印象です。《平家物語》の知識が少し有ればより楽しめると思います。僕は流西遊影旅から帰った直後、もう一度彼女の演奏を聴きました。壇ノ浦ではなかったのですが、登場人物なども多少わかり、また別の味わいが有りました。

なお会場には榎本桃香さんの肖像画を飾っています。これは僕の絵では無く、やはりイラストレーターである妹、長野美穂の作品です。美大を出て技術もある彼女の絵は迫力が有りますので、あわせてお楽しみください。僕の絵が霞むのでヤバいですが。

昨日もう一つ面白い出会いがありました。友人の紹介で来てくれたカメラマンのナカノさんです。僕は311の被災地支援のためにTシャツを作り、売り上げを現地に送るという活動に関わっていました。支援先の岩手県大槌町の特産品が鮭なので、Tシャツには僕が描いたサケのイラストを配し、「鮭T」と呼ばれて多勢の方のご支援を頂きました。ナカノさんは元々鮭の研究者であり、たまたまこの鮭Tを購入していたのです。そのTシャツの事が最近ひょんな事から僕の友人との会話で話題になり、この個展に足を運んでくれたのでした。

会場には読売新聞で連載している映画紹介のコラムの原画を飾っていますが、そのうちの一枚がスウェーデン他合作の《サーミの血》と言う映画。それを見たナカノさんが“実は私はサーミの人たちの写真を撮ってるんです”と切り出しました。サーミというのはスカンジナビア半島で主にトナカイ遊牧をする少数民族。ナカノさんは希少になったサーミの老猟師を追い続けているとの事。日本ではあまり報道される事がない北方の伝統社会の記録を続ける貴重な活動です。会場にちょうど居合わせた友人の映像ディレクター、ヤマダさんに早速紹介しました。ヤマダさんは農大探検部出身で世界中を旅してきた映像監督ですが、スカンジナビアには訪れる機会がまだなく、憧れの地なんだよーと語り始めました。個展を開催するのはエネルギーがいるけど、こんな出会いも多々起こるので報われます。

昨日お知らせした好評をいただいているマグカップ、会場にある在庫があと僅かになってしまいました。でもご希望が有れば追加で制作したいと思っています。お問い合わせください。では最終日、会場でお目にかかれる事を楽しみにしています。