作品紹介
来場してくださる方々に持ち帰っていただこうと、小さな二つ折りのパンフレット(B6判)を作りました。今回の個展「J. 風そよぐ庭から」に向けて描き下ろした11作品をキャプション入りで載せています。
一年前も梅雨だった。
雨が降ると、庭の緑の匂いが彼女の寝ている部屋の中まで漂った。
今年はひとりで、ヤブ蚊に刺されつつ庭をスケッチ。
ネコどもが「なにやってんの〜?」と言いながら摺り寄って来る。
しゃがむと、草いきれと地面の暖かさに包まれる。
そよぐ風がまだ優しい。
植物を描こうと思ったのに、結局、画面にはネコが。
二枚の油絵を最初に描いた。
慣れぬ画材と格闘する姿を、きっと天から見てる。
苦しくて楽しい時間をありがとう。
ヤブジラミ[油絵]……いわゆる“引っ付き虫”植物。今まで「じゅんこの庭」ではあまり見かけなかった。今年、目について、形が面白いのでスケッチをした。ネコモデルは我が家のお客さん接待係のクルミ。
ツユクサ[油絵]……5月はツユクサが盛りになる。青い花びらが一般的だが、「じゅんこの庭」ではトキワツユクサという白い花の種類が咲く。3年くらい前に衝動的に描いた油絵に、今回上塗りを重ねた。モデルはクルミ。
ドクダミ[水彩・色鉛筆]……ツユクサの三角の花が終わると、ドクダミの十文字の白い花に入れ替わる。今年は今までいなかったアマガエルが「じゅんこの庭」に現れた。どこでオタマジャクシ時代を過ごしたのか不明。ネコモデルはクルミ。
遠雷[水彩・色鉛筆]……仕事場の椅子に寝るナズナのスケッチから。ネコは熟睡すると結構寝言を言う。ガルガルと何かに怒るような声を出すときも。草原の夢でも見ているのではないだろうか。遠くに雨の柱が立ち、かすかに聞こえる雷にうなっているのかもしれない。
フキ[水彩・色鉛筆]……植えたわけではないが、毎年顔を出す「じゅんこの庭」の常連。毎年、フキノトウからフキ本体まで、春~初夏の食味として楽しませてもらっている。今年は例年になく成長がよく、茎も立派に育った。ネコモデルは気の強いアンズ。
ハルジオン[水彩] ハルジオンは「じゅんこの庭」に毎年咲く。これでもかというくらい花が密生するのが、カワイイ。
ビワ[水彩・色鉛筆] 今年はビワも豊作だ。じゅんこは、ビワのタネで香り付けして作る杏仁豆腐が大好きだった。療養中はビワの葉で温湿布もよくした。ビワという名のネコもいたのだが、昨年1月に交通事故で亡くなった。きっと今は天でじゅんこと遊んでいると思う。ビワには植物でも動物でもお世話になった。この絵のネコモデルはビワとよくじゃれ合っていた兄弟のモミ。ビワが亡くなってから人なつこくなった。
マグワ[水彩・色鉛筆] 「じゅんこの庭」には、マグワとヤマグワの両方が1本ずつある。どちらも鳥がどこからか運んできたタネで育ったものだ。例年ドドメ色の甘い実をつけてくれるが、今年はベランダを作る際にマグワを強く剪定したため、実がつかなかった。昨年6月、近所の大学の養蚕研究室からおカイコさんを貰い、このクワの葉で育てた。じゅんこもカイコを見て喜んでいた。ネコモデルはクルミ。
千草[水彩・色鉛筆] 庭の雑草の葉を模様に仕立てた。今年は例年見かけない植物が増えた気がする。庭の改造が植生に影響しているのだと思う。ネコモデルはナズナ。
月雲[水彩・色鉛筆] 結婚前にじゅんこが東北の一人旅をして、温泉で撮った写真をモチーフに描いた絵。昨年、じゅんこの写真を整理しているときに久しぶりに見つけ、とっさに描いたラフに今回手を加えた。
庭守[水彩・色鉛筆] 「じゅんこの庭」を居間の窓方向から見る。冬の間は葉が落ちてスカスカしていた庭が、初夏を迎えて急にもりもりと緑にあふれている。今年は、どの植物もなんだかいつもより元気そうだ。庭の真ん中に、じゅんこの精霊が庭守(にわもり)としているような気がする。
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