初めてのお散歩

9月20日(火)

雨模様で気温も急に低くなったので、久しぶりにジーンズを穿いた。夏場はほとんどずっと短パン、Tシャツ、サンダルの生活なので、今回の個展でもこれまでは短パンだったのです。今日来てくれた友人のKMさんから開口一番「ハレの場なのに、なんでいつもと全く同じ格好してるわけ?少しはオシャレしたら?」と言われてしまった。そうかー、僕としては襟付きのシャツを着てるだけ、いつもよりよそ行きのつもりだった。まして今日は長いズボンを履いているのになー。KMさんはライターで作家。高校の先輩でもあり、地平線会議仲間で遊び仲間でもある。彼女の単行本の表紙はこれまで3冊手がけさせて頂いた。そのうちの一冊の表紙原画も今回展示しています。

これから仕事と言うKMさんが帰った後はお客さんが途絶えた。丁度お昼時だったので、はじめて近所にお昼を食べに出かける。この辺りは路地も多く、その奥に興味深いお店がぽつんとあったりして面白い。食事をしたあと少々散歩をする。今回ギャラリーに通うようになって初めてのお散歩だ。とはいえ、あまりゆっくりしていてお客さんと会えなくても申し訳ないと思い、40分ほどの外出で戻ったのだが、小学校時代の友人IMさんが来て帰ってしまったあとだった。今回初めて直接会えなかったのが残念。しかしその後はまた無人のギャラリー。来週に読売新聞の締め切りが有るため、映画を見なくてはならない。お客さんも来ないので、配給会社から送られて来たある映画をDVDで見始める。しばらく見たところで初日に来てくれた地平線会議仲間のSRさんが、その時にじっくり見られなかった絵日記や、会場で流しているDVD映像(内容は僕の絵の紹介)等を見たいと言ってまた来てくれたのも嬉しい。

やはり地平線会議の古くからの友だちで、プロのケーナ奏者のNRさんとピアニストのN夫人、長男のSちゃんも来てくれた。ご夫婦とは「品行方正楽団」というバンド仲間でもある。二年前の個展の際は、パーティーの際に楽団で演奏をしてくれた。僕のようなトーシロー(素人)と一緒にバンドごっこをしてくれる、とても寛大な心の御夫妻なのだ。このバンドにはカミサンのジュンコも三線パートで参加している。彼女も忙しくてこれまで来られなかったが、今日初めてギャラリーに来てくれた。こじんまりしてオシャレな場に驚いたようだ。僕らは高校一年生のときの同級生だが、三年生のときの同級生、KSも来てくれた。当時の文化祭のために作った8ミリ映画があるのだが、彼はその監督、僕はその撮影担当だった。高校生活最後の夏、僕らはかなり映画制作にのめり込んだ。出来た映画は評判を呼び、上映会場には順番待ちの列が出来た。そしてその映画に関わったコアの仲間はほとんど浪人したと言うオチがついたのだった。

長野県でペンションを経営するFKさんも来場された。テキスタイル作家のAAさん、裂き織り作家のNYさんも一緒。三人とも昨日のデモ友だ。FKさんが昨日宿泊した宿からは神宮球場が見下ろせたとか。双眼鏡があったら試合が見られたかもしれない。実はこの個展が終了したらすぐ、彼女のペンションでお話会をすることになっている。「旅の話をなんかしてよ。あと、お絵描き教室もやってね」と言われ、(いつもの通り)あまり考えずにお受けした。ギャラリーに詰めてもヒマだろうから、その間に何か考えようと思っていたのだけど、今のところあまり考える余裕がなく、どうなる事やらわからない。昨年4月にFKさんを始め数名でコスタリカの旅をした。彼女の驚くほど豊富な人脈を便りにドタバタの二週間だったが、その時もかなりユルいノリでなんとか乗り切った。という事できっとなんとかなるのじゃないかな。

今回展示している作品の中で一番新しいのはひときわ大きい屏風絵。縦横160センチほどの二つ折りの屏風にアクリル絵の具で描いた柳とピンクの雲がででんとある。これは「座敷おやじ」というお芝居の中で使われた小道具。上演は今月の初め9月2〜4日の三日間6公演だった。お芝居の座長であり、役者でパントマイマーのHFちゃんから依頼された仕事だ。芝居の中で披露される幇間のお座敷芸で屏風を使うのだ。普段の仕事で描く絵とは全然違う大きな枠で思う存分筆を振るえ、とても興味深く楽しい仕事だった。描画面積が大きくて予想より制作時間がかかったが、結果的にはこの絵に向き合ったおかげで展示作品にメリハリが出来た。 僕に賭けてくれたHFちゃんにはすごく感謝しています。そのHFちゃんは初日にギャラリーに来るつもりだったのに、道を間違えて結局たどり着けず、その日は断念。今日ようやく来てくれたのでした。彼女のお芝居ではいつも裏方を手伝っているMさんと今回の個展に大活躍してくれたウルトラスタッフのYIちゃんも来てくれた。そこにHFちゃんのお稽古毎で姉弟子に当たるAさんが御来場。彼女はこのギャラリーのご近所さんで、初日前日の立て込みの時に見学に来た人だ。僕はHFちゃんの前回の芝居でもチラシを制作したのだけど、そのチラシを一目見て絵を気に入ってくれたのがAさん。今回もチラシのイラストを気に入って芝居を観劇し、その上で個展にも足を運んでくださった。とても芸事が好きな方で、たとえばナンキン玉スダレだとか、トウハチケン等江戸時代からの伝統的な大道芸やお座敷芸を学んでいる。面白い人がいるものだと感心しきり。

今日最後にドアを開けたのは山仕事仲間のKMちゃんと旦那のK君。おめでたで来年1月出産予定のKMちゃんは会うたびにお腹が大きくなる。このしあわせなK家の結婚記念に製作した手ぬぐい原画も今回展示している。会場の手ぬぐいコーナー一番下段に展示した黄色い印象の手ぬぐいがそれだ。彼女が宮城県鳴子の出身のため、名物のこけしや彼女の想い出に残るふるさとの風景等をデザインしたもの。このデザインの想を練るために彼女の故郷を訪ね、いろいろ案内して頂いたのを思い出す。ギャラリークローズの時間になったため、KM夫妻とHFちゃん、YIちゃん、Mさん、そしてカミサンと7人で一杯飲みに行く。ギャラリーのごく近所でモツナベのお店を発見し、突入。まだ開店一年くらいのお店で料理もおいしかった。なんといってもトリカワ(焼き鳥)が一本50円とはいい事だ。顔ぶれも普段に無いメンツで楽しい。結構お酒が強いKMちゃんはさすがに今は(あまり)飲めないといってノンアルコールビールを頼む姿が珍しかった。神宮前二丁目界隈はまだまだ面白いお店がいっぱいありそうだ。

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