礼讃日記

え〜雨ですね。昨日とうって変わって肌寒い朝。三寒四温とはよく言ったものです。東京マラソン開催の今日、「描翳礼讃(びょうえいらいさん)」展3日目です。今日も12時半から終日在廊します。本日、日曜日の閉廊時間は17時(午後5時)ですので、お気をつけ下さいね〜。

昨日は暖かい土曜日で大勢の方にお運びいただきました。開場時間に10分ほど遅れてメゾンドネコに到着したらもう7、8名の方が。昨年亡くなった妻淳子の友人たちでした。本当に励みになります。その後もお天気も良く途切れず人が訪れて賑やかな一日でした。ありがとうございました。

今回の展示は谷崎潤一郎のエッセイ「陰翳礼讃」をもじったタイトルに因む2種類の作品を中心に展示しています。黒が際立つ切り絵作品6点と、陰翳を意識して描いた水彩作品5点です。これまでも切り絵は時々制作して、展示した事もあるのですが、メインに出した事があまり無かったせいか「切り絵は始めて見ました」という声を聞きます。僕は仕事では主にアクリル絵の具使う事が多いのですが、時々違う画材や技法を試してみたくなります。黒い紙をカッターで刻む切り絵は、なかなか思い通りにならないところが新鮮。バランスを考えて切り進むうちに下書きとは違う形が現れてきます。今回制作した6点のうち、「蚊取猫」という作品では背景が細かくて大変でした。切り抜いた絵はマーブリング(墨流し)という技法で作った背景に重ねています。昭和40年代の人気テレビ番組「ウルトラQ」のタイトル文字が流れて渦を巻いたような不気味な図柄の表現をしてました。あんなイメージが墨流しです。水の上に垂らした絵の具を吹いたり、かき回したりして複雑に絡み合わせ、紙を載せて写し取る技法です。水の上の絵の具なのでコントロールは難しく、偶然できる図柄が面白い。何枚も作って、切り絵の雰囲気と合いそうな色味のものを選択して合わせました。

水彩作品ではペリカンの固形不透明水彩を使っています。アクリル絵の具と違い、塗り重ねると下の色が混色され、予想外の色になったりします。水彩絵の具は、本来はあまり塗り重ねず、紙の白や絵の具の濃淡で表現する技法が美しいんですけど、陰翳を意識して描いたら何度も筆を重ねていました。普段イラストの仕事ではあまり使わない表現なので、自分でも新鮮です。

今回他に普段の仕事の展示もしてますが、切り絵と水彩を見ていただけると嬉しいです。