旅の一座の物語

今日は雨です。気温もぐっと下がって肌寒い朝です。9月ももう終わりだから不思議ではないけど、シルバーウィークの間の晴天続きと暑いくらいの気温は天神様の粋な計らいだったのかな。

昨日は平日でもあり、お客さんも少なめで皆さんゆっくりご覧になっていかれました。お話しする時間もあり楽しく過ごせました。ありがとうございます。昨日朝一番でちょっとした新しい試みをしました。今回のプロデューサー役をして頂いたマルヤマさんの発案で、ギャラリートークDVD制作を試みたのです。ゴープロという小型カメラを僕の頭に装着し、作者自身の目線で今回飾った絵を解説するという試みです。このカメラ、二年前のソゾロアルキ展のDVD制作でも活躍しました。超広角レンズで画角が広く、アウトドアアクティビティでもよく使われているものです。友人のカナコちゃんにインタビュアー役をお願いし、一通りの絵を説明しました。途中お客さんが入ってくると少し中断しながらまた継続の繰り返し。なんだかんだで1時間半ほどかかりましたかね。今マルヤマさんが鋭意編集中です。あと会期はわずかですが、間に合えば販売予定です。マルヤマさんはお父上が映画関係者だったこともあるのか、映像センスが素敵です。小生の解説ぶりには不安が大いにありますが、楽しみです。

それで思い出しましたが、今回のメインビジュアルのケモノケ作品には物語があります。ギャラリー奥に飾っているちょいと目立つ描き下ろし(?)作品のことです。自転車の梱包に使われる厚めのダンボールに描いた風景の上に、案内のハガキに使った二体のネコの他、全部で六体のけものけが少し立体的に飾られているものです。

最初に作った二体のネコを見たマルヤマさんが、「これは旅芸人の一座のようだね」と言った感想をヒントに、残りのけものけを作りました。設定はこうなります。キセルをくゆらす黄色いネコが一座の座長です。手に斧を持っている事から分かるように、もともとは樵(きこり)で、山で稼いだお金をもとに興行を思い立ったのでしょうか。着物を着たメスネコは一座の看板女優です。春信の浮世絵「俄雨」のように足を少し見せた若い女優で、お芝居はそんなにうまくないんだけど色気があり、そこそこ人気があるのかもしれません。下の方にいるカエルのようなものは、一座の座付き作者です。「四六のガマ」という《蝦蟇の油売り》の口上に登場するガマがいますが、あれは前足の指が4本、後ろ足の指が6本と言われます。こちらの蝦蟇は腕が4本、足が6本というオバケガエルです。作家らしく右手に筆、左手には紙を持って、何やら文句を言っている感じです。多分口うるさい神経質なヤツでしょう。右手下方にいる切り株のオバケのようなものは、下っ端の雑用係。切符きりや舞台の小道具係などをしています。何しろ指が葉っぱなので余り器用ではなく、しょっちゅうミスをして皆から怒られているのですが、ウドの大木というか、柳に風というか、余り堪えない所が長所でもあるのかな。森の奥に見え隠れしているのが、一座の花形役者のバードマンです。鳥なので表情に乏しく決して芝居がうまいわけではないんですが、やたらハデ好きで見栄を切る仕草に華があり、大向こうに受けるのかもしれません。手に持ったリンゴ一つ食べるのにも仕草が大げさで、仲間内ではちょっとうざったがられる面も。

そんな彼らが旅をしている所が、背景の不気味(?)な山がある地域や、森の中の村なのでしょう。

昨日ギャラリーに来て下さった映画監督のアヤさん似そんな話をした所、「道化役のようなキャラが足りないなー」とアドバイスをくれました。彼女はドキュメンタリーの映像作家ですが、日常の風景に物語を見いだすという意味ではドラマにも通じるものがあるのでしょう。キャラを見るセンスがあるのだと思います。今回には間に合わないでしょうけど、今後一座の物語を少し発展させるのも面白いかなと思いつつ、昨夜は帰路につきました。

さて、けものけ展も後3日を残すばかり。今日も一日在廊の予定です。雨ですが、ご興味とお時間ありましたらお運び頂ければ幸甚です。