今回展示した作品「天妄懐界旅絵日記」
天妄懐界旅絵日記
昔の家族写真がなんだか気になります。まだピースサインは無く、ポーズを取る風潮もあまりない、昭和半ばの記念写真。所在無げに立つ家族や友人たちの、風景に馴染まず戸惑った感じの表情や仕草がユーモラス。
あざとい動きがない分、撮影時の状況をいろいろ想像します。どうしてここにいるのか、季節は、時間は、いつなの? 背景に何が写っているんだろう?
現代の僕の旅をモチーフに、この“ちょっとへンな感じ”を描くのが今回の裏テーマ。ぼーっと立った主人公たちの背景に、何か不思議なものが紛れ込んでいる様子を描きました。前に立つ2匹の猫たちに昔風の服装をさせたら、絵から自然と会話が浮かび上がってきたので、キャプションは架空の会話に。お話に特定のモデルはありません。
普段僕のイラスト仕事では、机に平置きにした紙に書くことが多いのですが、今回はキャンパスに描きました。イーゼルに立てて、下書きをせずにいきなり筆で書き始めます。頭の中にはなんとなくイメージを持っていますが、筆の勢いで次に何が出てくるか自分でもよくわからず、その展開がとても新鮮で描くのがとても楽しかった。子供の頃の、何も忖度しない「お絵かき」をちょっと思い出しました。