絵本『仔牛』

 この絵本は、愛知県安城市が主催する「第三回新美南吉絵本大賞(2023年度)」に「入賞」した作品を自主制作したものです。南吉は『ごんぎつね』で知られる同市ゆかりの童話作家。5年に1度開かれる同賞は、課題の南吉の童話10編から1話を選んで絵本にするコンペでした。

『仔牛』は言葉遣いが可愛く、読んだ途端に絵柄が浮かんだのです。登場するのが牛だけというのもシンプルで気に入りました。10見開き以上という決まりがあり、最初の見開きには本文にはない風景を描いたり、仔牛のツノが生えてくるところを絵だけで表現するなどの工夫をしました。
 和紙に墨で線を描き、クレヨンで着色という技法も初めての試みで、ここ数年習っている習字の応用です。使った半紙が薄くて下描きができないので、小さく描いたラフスケッチから一発勝負。描き直しもしませんでしたが、墨の強い線のおかげで、元気でファンタジックな仔牛を表現するには向いた技法だったかなと思います。
(略)


 今回の応募作品は大人の部、子供の部合わせて500点あまりだったそうです。2月18日に現地で開催された授賞式では、大人の部では大賞1点、優秀賞2点、特別賞1点、入賞4点が発表されました。
 受賞作品への講評では、僕の『仔牛』は「絵が大胆」「牛の表情が豊か」「線の勢いがある」などの感想をいただきました。『仔牛』は他にもうひと方が取り上げましたが、同じお話でも構成も絵柄も全然違う雰囲気を醸していました。改めて絵本というメディアの面白さと可能性を実感しました。(長野亮之介)

※以上、本書の「あとがき」より、抜粋して引用。


『仔牛』

文 新美南吉
絵 長野亮之介
編集・DTP 丸山純
発行 もへじ堂
   moheji-do.com
発行日 2023年11月11日

底本 「校定 新美南吉全集第四巻」大日本図書
    1980(昭和55)年9月30日初版第一刷発行
    1987(昭和62)年2月15日第三刷発行
初出 「ろばの びっこ」羽田書店
    1950(昭和25)年6月5日

Posted by mar