作品紹介・1

いざ紙に向かったものの、長く一緒に暮らした女性の姿が
うまく掴めない。たくさんの時代を共に過ごし、
その時々のたくさんの顔を知っているから迷うのか。
画材も普段と違い、水彩絵の具とカラーインクを使った。
仕事で慣れた画材じゃない雰囲気を得たかったのか。
いつもと色々なことが違う暑い夏の終わりに、
ズットスキなひとを思いつつ絵筆を運びました。

アオザイ……《お別れのとき》にはアオザイを着ると自分で決めて、じゅんこは静かに旅立った。95年にベトナムのハノイでオーダーしたお気に入りの民族衣装だ。ブルーのシルクが似合って美しかった。生きて身に纏う姿をもう一度見たかった。

なめとこ……宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』のラストシーンをイメージした。シンと凍った真冬の夜に、主人公の小十郎が熊達にみとられるところだ。じゅんこはこの童話が大好きだった。

むさしの……じゅんこの古いアルバムを見ながら、イメージをふくらませた武蔵野の風景。子どもの頃、よくこんな風景のなかで遊んだ記憶がよみがえる。
(額装した作品を会場で写真で撮ったため、左上にガラスの反射が写り込んでいます)

カンノン……じゅんこはたくさんの人を愛し、愛された人だと思う。亡くなって、その心の広さを改めて感じる。観音様みたいだな人だったよねと、ある友人が言った。これからも友達みんなを見守ってくれるに違いない。

Posted by mar