台風

9月21日(水)

韓国映画「アジョシ」を見る。ウォンビンと言う甘いマスクの兄ちゃんが主役なのだが、これが滅法界に面白かった。軍の特殊工作員という過去を隠し市井の片隅でひっそりと生きる青年が、孤独でけなげな少女を救うために立ち上がると言う、ザックリとそんなお話だ。しか−し、その背景に子供を始めとした闇の臓器売買組織の動向が絡む。悪人にもいろいろいるけど、金儲けのために平気で子供を殺す悪人には同情も共感も一ミリも入り込む余地が無い。それだけに、ヒーローが悪役を倒す=殺すことに無条件でカタルシスを感じられる。昔の任侠映画だと道理の通らない悪行に主人公が耐えに耐え、ついに堪忍袋の緒が切れると言う展開。マカロニウエスタンなら、凄腕のガンマンが利き腕を折られ、袋だたきのリンチを受け、九死に一生を得てついに復讐の火蓋が切られると言うところかな。とにかくウォンビンがめちゃくちゃカッコ良い。口数少なく、悲しそうな目をした殺人マシーンと言う役どころがぴったりだ。そして子役のキム・セロンが良い。どこにでもいそうな、ある意味平凡な容姿なのに、目の演技が自然で、セリフには本当に気持ちが籠って聞こえる。どんな名優も子供と動物の演技には勝てないと言う。確かにセロンは子供だけど、子供ということに寄りかかっているだけでない演技力を感じる。だからこそ、さして縁も無いウォンビンが命がけで彼女を助けようとする動機に共感できちゃう。2時間こんなにハラハラドキドキの映画もなかなか無いです。ただし、血しぶきが飛び散る映画なので、その向きが不得意な人はご注意を。

ほとんど気分はウォンビンとなって映画館を出るとどしゃ降りだった。もちろんウォンビンは雨なんか気にしないわけで、僕も傘をささずに小走りで駅へ向い、ギャラリーへ。台風が来ているこんな日にお客さんは居ないだろうなと思ったが、早速お一人待っている。江戸芸のエキスパートのAさんが、昨日は切らしていた手ぬぐいを買いに再度来てくれたのだ。早速お渡しし、しばし歓談。その後はお客さんの影もなく、静かなギャラリーで頼まれている和文英訳に頭を絞る。英語が得意なわけじゃないんだけど、ちょっとした経緯で引き受けた。なかなかムヅカシイが、まず日本語をもう一度別の日本語に置き換えるような作業をする必要があって、それが面白い。

そんな事をダラダラやっているところにまさかのお客さん。なんと20年振りくらいにお会いするSEさんだ。彼女は地平線会議の仲間で登山家だった。結婚、出産後子育てに忙殺され、いつのまにか地平線会議も縁遠くなってしまったとか。それが今朝の読売新聞に掲載された「ハナタレ展」の紹介記事を見てやってきてくれたという。こんな出会いがあるから世の中面白いですね。絵を見るより何より、まずしばらく彼女のこの20年のお話に聞き入ってしまった。その後絵を見てくれたが、なんと読売新聞「銀幕一刻」のイラストと記事はほぼ最初からずっとスクラップしているそうだ。この連載は15年目に入るので、相当な数になっているはず。有り難い事です。

SEさんが帰った後はますます風雨が強まる。とはいえ、ギャラリーは気密性が高いので、あまり外の音も聞こえずそんなに危機感を感じなかった。そこへカミサンから早く帰った方がいいよと言う忠告の電話。なんと電車がどんどん運休になっているとか。まだ5時だったが、今日は早めに切り上げることにし駅へ急ぐ。突風が吹き、傘なんかさしていられない。またもウォンビン気分で雨に濡れながら歩く。おまけに今日着ているのは「雨ニモマケズ」の鮭Tだしね。実を言えば僕は台風の日の怪しい雰囲気が結構好きだ。沖縄の友人等には眉を顰められそうだが、少なくとも関東の台風は嫌いじゃない。豪雨で道路がたちまち川のようになり、アスファルトの下に隠れて普段見えない土地の起伏や谷や沢が見えて来る様は、東京の厚化粧が洗い流され、田舎娘の正体が露になるようで、面白くて好きだ。

すでに総武線も中央線も停まっていたので、大江戸線と丸の内線を乗り継いで荻窪まで行き、そこから家まで楽しいハイキング。以前ジョギングしたときはゆっくり走って1時間だったので、まあ荷物を持って歩いて1時間半と読む。実際は1時間40分かかったが、途中で買い物などしたのでまあまあこんなところかなあ。三鷹駅付近の沿道には街路樹の折れた枝や壊れた看板等が散乱していた。相当風が吹き荒れた気配だ。しかし家に着く頃には風も収まって来て、雨は上がっていた。久しぶりに運動不足を解消できてよかった。明日は台風一過の快晴かな?

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台風 への1件のコメント

  1. coco のコメント:

    駐妻の方からの紹介です。今から個展に行きま~す!!楽しみです!!

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